よしなしごと

日々を淡々と

『昨日のカレー、明日のパン』木皿泉

昨日のカレー、明日のパン あらすじ


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7年前、一樹が亡くなった。その嫁のテツコと一樹の父・ギフがひとつ屋根の下で暮らしている。
どうしてそんな生活が続くんだろう。
一樹の幼なじみ・ムムム、一樹の従兄弟・虎尾、それぞれに一樹への思い出を持っていて、彼への弔いをしている。
1人の人間が死んでも、こんなに周りから愛されている…
少しずつ、少しずつ、悲しみを出しながら。それぞれに彼の遺品と対話しながら、彼を弔っていく。

テツコには岩井さんという恋人がいる。不思議に明るい人物であるが、ある日ギフの起こしたトラブルから、岩井さんはギフとテツコの家で夕飯を食べはじめる。
ギフとテツコ。奇妙な2人暮らしをやめない理由を岩井さんは見つける。
銀杏の樹があるこの家で続く、この何でもない生活。

テツコはひとり京都まで、岩井さんの茶碗を買いに行く。その茶碗を岩井さんは、家にくる度に律儀に持って来て、自分の家へ持って帰っていく。



全体の感想



親しい中にも、相手といい「間」をとっている。暗黙の内にお互いを思っている。外から来た人も、この輪の中へ徐々に馴染んでいく。心地よく表現されていて、すごく和みました。



買った経緯


大好きな本屋さんで
3カ所に平積みされていました。
「私はコレが好きなんです」と大きくポップが貼られていました。本当に好きで、色んなところに置いていらっしゃるんだなぁ…と思い、購入。
短編で時間軸を変えて、一樹が生きていた頃からの話もありました。
生者が死者となっても、その温かみが伝わってくる。そんな作品だと思いました。